あまり人に求めない、期待しないとは言いながらも
私たちは今を生きています。
そして、私たちは自分自身を生きています。
しかし、振り返って見てください。
そこにはもう1人の自分が生きているのです。
それは、自分のなかにいる子供時の自分です。
私は私を考え、感じ、様々な意思決定を行い生きていますが、実はこの過程において、私のなかにいる子供時の自分が大きく影響をしているのです。
そして、この子供時の自分のことを、心理学用語では、インナ-チャイルドと呼びます。
インナ-チャイルドは子供時の体験から得た自己防衛手段、思い込み、感情の記憶(心が満たされた・傷ついた)等をそのまま今に持って、私たちの中に生きています。
そして、それらは今の私たちの生活に大きく影響しています。
では、ここでインナ-チャイルドの自己防衛手段と思い込みについて少しみてみましょう。
(感情の記憶については、過去体験をした事実に基づく感情であり、思考的側面の自己防衛手段と思い込みとは異なります。今回は思考的側面における自己防衛手段と思い込みに焦点を合わせます)
1 自己防衛手段(別名:もうこれ以上傷つきたくない)
人はいつもいつも傷ついてばかりいると生きていけません。子供でしたらなおさらです。そして子供は決定をします。傷つかないためにはどうすればいいかを。
この傷つきから自分を守る方法は様々です。それは自分を傷つける対象や内容が各々違い、そこから自分を守る方法も様々あるからです。
例えば子ども時、親から条件付けの愛しかもらえなかった子供は、親から愛を得よう、認めてもらおう、期待に沿えず怒られて傷つかないようにと、親の条件、期待に合わせすぎます。
また、親から欲しい愛が何をしても得られないと悟った子供は、親から愛を求めることじたいをやめてしまいます。
親から何をしても怒られる、批判され続ける子供は、自主的に考え行動することをやめてしまい、親の指示したことしかしないようになります。怒られる、傷つくことから自分を守るのです。
このように、子供が自分を傷つかないようにするための自己防衛手段は、親に合わせる、愛を求めない、自主性の放棄と様々です。
そして、大人になった私たちにとっての問題は、インナ-チャイルド(私たちのなかにいる子供)が昔と同じように傷つくことから自分を守る方法で考え決定し、それに基づき私たちも考え、行動することなのです。
親の期待に合わせてきた場合は、人からの承認を得るため、人の期待に応えようと人に合わせすぎるでしょうし、親からの愛すら得られないと悟った場合は、他者から愛を求めることをやめてしまうか、過剰に求めてしまいます。また、自主性を放棄した場合は何事においても意思決定せず、主体性のない受身の人生を送ってしまうのです。
これらは、すべてインナ-チャイルドが過去、傷つかないための自己防衛手段を今も使い、今の私たちの思考や行動、態度の決定に大きな影響を及ぼしているのです。
2 思い込みの継続
自己防衛手段と密接に絡んでいます。
まず、思い込みとは何でしょうか。
先の例で、親の条件付けの愛、期待に合わそうと一生懸命の子供、そして一生懸命努力しても親の期待に沿えない子供は、親の期待に沿えない自分には価値がないと思い込んでいます。何をしても親から愛を得られない子供は、自分は愛されるに値しない子供であると思い込み、何をしても怒られ批判され続けられる子供は、自分がいけないからだと思い込みます。
そして、この思い込みをインナ-チャイルドが今も持ち続けている限り、今の私たちの人生、対人関係、社会生活に影響を及ぼし、生き辛さを抱えてしまうのです。
自分に価値がないと思い込んでいると、他者の肯定的評価を得るために気を遣い、かつ他者の否定的評価を過剰に気にします。愛されるに値しないと思い込んでいると、適切な自己愛も形成されず人間関係が築けないでしょう、また自分はいけない人間、無能な人間であると思い込んでいると自己決断能力欠如、勤勉性欠如になってしまうかもしれません。
このようにインナ-チャイルドが自分のことをどう思い込んでいるかによって、私たちの基本的な人生態度も決まり、社会生活に支障をきたすです。
ではここで、自己防衛手段(別名:もうこれ以上傷つきたくない)と思い込みの関係です。
例えば親の条件付きの愛、期待に沿えない場合ですが、自己防衛としては親に認めてもらおうと親を意識して親に合わせすぎる行動をします、でも、その背景には親の期待に沿えないと、自分は価値がないと思い込んでいます。
また、親の愛を求めながらも、親からの愛が得られない場合は、求めることを諦めることにより傷つくことから自己を防衛します。そして、そこには自分は愛される価値がないという思い込みがあります。
常に親から怒られ批判され続けている場合は、自分がいけないからだという思い込みがあり、主体性を放棄して親の言う通りにして自己を防衛するのでしょう。
自己防衛手段と思い込み。どちらが先に生まれるのかは分かりません。
2つ同時に生まれるのかもしれません。
しかし、いずれにせよ子供時身につけた自己防衛手段と思い込みを、私たちのインナ-チャイルドが持っている限り、私たちは今、生き辛いのです。
さて、長々と書きましたが本題です。
前回私はあまり人に期待しない、求めないと書きましたが、本当にそうなのだろうかとも思っています。
もしかしたら、インナ-チャイルドの自己防衛手段と思い込みが影響しているのかもしれません。
自己防衛手段として人に対する拒絶を恐れ、人との親密を避けているとしたら・・・。
また、思い込みとして自分は愛される価値がないと思い込む、もしくは自己価値に疑念を持っているとしたら・・・。
本当は人を求めたいと思いながらも、人に求めることを諦めているのかもしれません。
インナ-チャイルドの自己防衛手段と思い込みは、意識されることがあまりありません。
瞬間に自動反応的に出てきて無意識的に意志決定をしていると思います。
ですから気付かない時が多いのです。
そう考えると、自分の子供時を何が起こり、何を感じ、そして傷つきから自分を守るためにどのようにしてきたか、自分に対してどう思い込んでいるのか等振り返ることは、インナ-チャイルドを理解するうえでも大切なのです。

